トリアエジング・デザインとは

ある学生と先生が卒業制作のテーマについて検討していました。先生は学生に言います「なぜ君はいつも『とりあえず..』と言うのか、もう少し計画性を持って卒業制作をしないと…」。すると、どういう会話の流れか二人の間で「とりあえず」そのものを卒業制作のテーマにしてみようという結論になりました。「とりあえず」はなぜ発生するのか、そこには「とりあえず」の必然性があるのではないか。学生は「とりあえず」な瞬間を探し始めました。
 
例えば、居酒屋の定番フレーズ「とりあえず、ビール」は、料理の注文なんて後回しにして、まずは皆が同じもので乾杯したいという一体感の演出をしています。また、「とりあえず○○しておいた」というのは、様々なやるべきことから、最優先にやらなければいけないことをしているということなのかもしれません。
「とりあえず、一服」や「とりあえず寝る」は、「判断の先延ばし」である一方、はモヤモヤした悩みから生まれる非効率な状況を脱して、すっきりした後にとりかかろうとする、ある種の合理性から生まれる行為なのかもしれません。
 
このように、「とりあえず」には人と人とのコミュニケーションを円滑化させたり、ものごとを合理的にスピーディーに進めるための機能があるのではないか。学生は、「とりあえず」してしまうことを「トリアエジング:Toriaesing」と命名し、日常の中の「とりあえずな瞬間」をアニメーションにして、「とりあえず」の効能を思索させるアニメーションを作りました。
 
以来、私もトリアエジングというキーワードが気になり、これをデザインの手法として捉えるとどうなるのか、サービスや商品に「とりあえず性」があるものは、どんなものがあるか、ぼんやりと考えてきました。
 

Case: 無料のお試し化粧品
自分にあうか試してみる、使えるものかどうか確認する。

例えば、「化粧品の無料のお試し」。高い化粧品を買っても、肌に馴染むか、品質の良いものかはわかりません。無料お試しは「オトクさ」も当然ですが、「自分に合うか確かめる」ことが重要。トリアエジングはあるサービスや商品を導入したイメージを喚起させるものなのかもしれません。
 

Case:後で読むサービス
後回しにできる、まとめてできるようにする

RSSやソーシャルサービスでニュースをチェックしていると、リンク先のウェブページを読み込むのは後回しにして、時間のあるときにゆっくり読みたいというニーズに応えるRead it laterというウェブサービスがあります。これも一種のトリアエジングなのかもしれません。
 

Case:デザインテンプレート
とっかかりやすく、即座に使い始めることができる

例えば、パワーポイントなどのプレゼンテーションのテーマや各種ソフトのすでにデザインされたテンプレート、これはユーザが操作の使い方がわからなくても既にデザインされたコンテンツの一部を変更するだけでデザインができるようになっています。「難しいことをせずに、とりあえずのものを作りたい」というニーズに応えるものです。

UXへの展開
Toriaesibility トリアエジビリティー

学生との言葉遊びをしている時にTriaes+ability:トリアエジビリティーという言葉が生まれてきました。使い勝手を示すユーザビリティー(Use+ability=Usuability)という言葉がありますが、トリアエジビリティーとは高い「とりあえず性」を指します。
例えば、プロフェッショナル用のソフトウェアの場合、プロフェッショナル向けにユーザビリティーを高めれば高めるほど、初心者にとって、使いにくいインターフェースになっていくことがあります。トリアエジビリティーの高いインターフェースとは、そのような問題に対して、アマチュアとプロそれぞれに対応する複層的なインターフェースなのかもしれません。
 
 
最近は、わたしも仕事のメールでこっそりと「トリアエジングな対応でお願いしたいと思います」などと送ってみたり、トリアエジングという言葉の普及に勤めようとしているのですが、あまり反応はありませんね.. ユーザーの即応を促すトリアエジング。みなさんは、どう思いますか?