モノローグ 2025.11

Xも、Facebookも、noteも、Instagramも、TikTokも、Snapchatも──どんなメディアでも、なぜだか投稿するのが憚られる。
それでも、日々の出来事をどこかに残しておきたい。
少し時代を逆行するようだが、個人ブログにモノローグ(独白)的に書き留めていこうと思う。1か月分を1ポストにまとめて投稿していくつもり。

2025年11月13日(木)

今日は、デザインリサーチ「営みの循環」の授業の日だ。参考になるニュースがあったので、学生に紹介した。

先日、大学の近く、伊勢原にある石田牧場がニュースで取り上げられていた。ここは“都市型酪農”として評価されている牧場らしい。ニュースによれば、さまざまな循環が巧みに仕組まれているという。

近隣の農家から飼料となる米を仕入れ、その米を食べた牛の糞が肥料となって農家へ戻り、イチゴなどの栽培に使われる。そのイチゴは、石田牧場に併設されたアイスクリーム店でイチゴアイスとして販売されている。さらに、伊勢原市役所のシュレッダーから出た紙くずは牛のベッドになり、近くのコーヒー工場から出る豆かすは糞尿の匂いの低減に利用されているという。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000465798.html(出典:テレ朝ニュース「グッド!モーニング」

中でも興味深かったのは、代表の石田さんの歩みだ。

畜産先進国であるニュージーランドで大規模酪農の低コストかつ効率的な運営を学んだうえで、帰国後はあえて独自の“都市型酪農”を追求しているという。つまり、その土地でしか可能にならない、シチュエイショナルで新しい営みを創り出している点が、非常に示唆的だった。

私がここに強く関心を持った理由は、富田研究室の今年のテーマが
「Situational Joy, Alternative Story ココにあるコレからはじめる物語」だからである。
成功のための普遍的なデザイン原則ではなく、状況依存的で関係的なデザイン実践を始めようとしている。

“ココにはないアレ”を探し求めるのではなく、“ココにあるコレ”をデザインの資源として見いだす。まさにその姿勢と重なり、大変参考になる事例だと感じたのだった。

2025年11月12日(水)

水曜日はいわゆる「朝から夜まで会議デー」だ。
私は2025年度から学科長になってしまった。いろいろ大変だ。とても大変だ。

そういえば先日、デザイン学会の情報デザイン部会(info-D)で「さまよう寄る辺」という小さなオンライン対談会があった。参加者は7人ほど。終わったのは夜の11時。まるで深夜ラジオ番組のような時間だった。話題提供者はinfo-Dの主査である常葉大学の安武先生。先生は常葉大学の学長になられたのだが、「大学運営もデザインの実践として語り合おう」という趣旨のイベントであった。

最後の語り合いの中で、私は「自分の仕事はフィールドワークとしてみなすことができるのか」と問いかけてみた。学科長というフィールドワーク。
そう考えると、日々の出来事の捉え方も少し変わってくるのかもしれない。

そんなドタバタの中、研究室に素敵な本が届いていた。
一つ目は、上平崇仁・飯島秀治『多元世界としての〈水俣〉から再生のデザインを探索する──デザイン人類学研究会 in 水俣 2024』。

水俣という土地を、デザインと人類学の知見から見つめ直した活動の記録だ。
共著者である文化人類学者・飯嶋先生をはじめ、17名ほどのデザインリサーチャーや人類学者たちによるフィールドワークと対談が収められている。

上平先生の地元・鹿児島を、ご自身の専門性から改めて見つめ直す。
しかも、仲間たちとともにそれを実践する。
自分も、いつかそんなことをしてみたい。

もう一つは、須永剛司・柿本悠・岡村綾華『デザインを学ぶこと2──森のそばで学ぶ』。
レジェンドデザイン研究者である須永先生が上田女子短期大学に着任され、新たなデザイン教育を始められた。その活動の記録をまとめた一冊だ。
まだ全てを読み切ったわけではないが、冒頭の文章からすでに痺れてしまった。
ぜひここに引用して紹介したい。

デザインの学びとは、知ることと行うことの両者をゆっくりと編み合わせていく、創造的でダイナミックで変化しつづける教育課程です。

今日、大学が本来もっているワクワクする学びが、その魅力を低減させています。その原因のひとつは、大学教育が「知識」を教えることに偏りすぎた結果だと言われています。でも、そこで学んでいる学び手たちは、実は、内に願いを秘めています。「そういうのが“知識”なんだ、ならそれを使ってこの社会を変えてみたい」や「それなら、自分も”知識”をつくってみたい」と思っています。彼ら、彼女たちはそんな「自分も行えるようになること」への希望を、なぜか口にはしません。でも、内に秘めたその思いを、しっかりと受けとめたいとぼくたちは考えました。
それが「デザインの学び」です。行うことと知ることを分けず、両者を行ったり来たりするのが「デザイン」。(p.10 より引用)

最後にもう一冊。
先日、卒業生たちと再会した際に、その一人の宮本さんが出版社「トラブルメーカーズ・パブリッシング」を立ち上げたことを知った。
ミスフィッツ(はみ出し者)たちのストーリーを伝える、東京拠点の出版スタジオとのこと。そこで刊行された本の一つが、こちらだ。
この本の裏表紙の言葉も、ぜひ引用させていただこうと思う。強くて柔らかい独自の存在感をもつ本たち。応援したい。

どうしてデザイン賞の審査員や受賞者は男性ばかりなの?どうして欧米でデザインを学んだことがステータスになるの?どうしてスマートフォンは女性の手には大きすぎるの?スイスを拠点にするグローバルなフェミニスト・コミュニティ Futuressが掲載してきた、<フェミニズムメデザイン)の視点でデザインの、そしてわたしたちの社会の当たり前を問い直す5本のエッセイを収録。トルコ、ノルウェー、アメリカ、インド、パレスチナまで。世界のフェミニストたちから届いた、希望と連帯のストーリー。(「Design is for EVERYBODY デザインはみんなのもの」 裏表紙より

2025年11月11日(火)

  • 東海大学の経営学部で「デザイン」という授業が始まっている。担当教員は西村歩さん(MIMIGURI)。西村さんには5年ほど前からお付き合いがあり、よく研究相談させてもらっている。私より随分と若いのに私より50歳くらい年上のような博識さがある。
  • 授業にはゲストとしてMIMIGURIの後藤円香さんが登壇されていた。ラインヤフーやクックパッド、そしてMIMIGURIのデザインのお仕事を紹介されていた。ありがたく聴講させてもらった。
  • 終わった後にランチをさせてもらった。生成AIとデザインの仕事とキャリアの動向についてお聞きした。
  • 終了後に研究室に信州大学のURA(研究マネジメント職)の方と、東海大学医学部の方が訪問してくださった。URAの方を対象とするデザインの学びの提供、来年に向けて動き出しそう。

2025年11月10日(月)

  • 今日はラボ・デイ。厚生労働省の年金局の方がオンラインでお話ししてくれた。
    3年生の課題テーマのひとつが「年金」だからだ。
    テーマは「デザインというわかり方:年金を表現してわかっていく」。
    課題の趣旨は以下の通り



「年金」という言葉を聞くと、さまざまな感情が掻き立てられる。わかっていそうで、よくわからない。できれば、わかりたくもない。けれども、本当はわからなければならない。いや、そもそも未来のことなど誰にもわかりはしない。「年金」は、未来を前提とする制度であるがゆえに今知らなくても「なんとかなる」「いや、ならないかもしれない」といった相反する感覚を生み出す。この意味で「年金」は、人々にとって距離を置きたい対象、すなわち「わかりにくさ」の象徴的存在といえるだろう。
 では、この近づき難い存在をどうすればわかることができるのだろうか。そこで、デザインしてみよう。 ただし誤解してほしくないのは、この課題とは「年金を誰かにわかりやすく伝えるためのデザイン制作」ではない。むしろ、誰かに伝えようとする営みを通じて、「年金」というテーマに取り組むことで、私たち自身はどのようにわかっていくのか。それを探る実践である。

言い換えれば、伝えようとする行為を通じて、自分自身は本当に知ることができるのか──理解が生成されるプロセスそのものを可視化する実践的探究である。 ウェブサイトで調べてもいい。資料を取り寄せてもいい。電話で問い合わせても、AIに尋ねてもかまわない。いずれの手段も、「つくる」ための調査や準備の過程そのものが理解を深めるプロセスとなる。その歩みを記録に残してほしい。

表現方法に制約はない。まずは年金の資料を図解してみてもよい。年金生活者を取材して写真やドキュメンタリーにまとめてもいい。納付状をスケッチしてみるのも手だろう。生成AIとの対話をグラフィックに展開するのも面白い。あるいは年金の専門家に聞き取りを行い、その一問一答を記録するのもよい。



作るもの
「わかっていく日記」
制作に至るまでのあらゆる過程を記録する。制作物の進展とその合間の文章。生まれいずる疑問や不安、納得に至る心情を、エッセイとして丁寧に綴る。 


「わかった結果作品」
映像、グラフィック、立体物など、表現方法は問わない。

2025年11月8日(土)

  • デザイン学会の秋季大会に参加した。この大会は学生発表がメインイベント。今年はポスター発表が130件程度に300名以上の参加者。例年より3倍程度の規模らしい。
  • 発表した学生は4年生と院生の7名。
    石田さん 生活する祖母の記録活動と展示会開催がもたらすもの
    片平さん  相談する行為を見つめ直すー趣味の相談実践を通じて
    山平さん  制御できない存在との描画表現の探究
    楊さん  失敗を包み込むテキスタイル作品の制作
    佐藤さん  単純作業から生まれる没頭体験のデザイン
    寺谷さん  協働型医療を核とした術後リハビリ支援のデザイン
    顧さん 日本語オノマトペにおける表現差異の視覚的探究

11月1日(土)

  • GK graphicsの40周年記念の会にお邪魔してきた。


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