INFOGRAPHIC 2014 最終発表会と振り返り

P11300622014年9月からスタートした、データサイエンスを学ぶ数学科の学生とデザインを学ぶデザイン学課程の学生、そして総務省統計局がコラボレーションしてインフォグラフィックを学ぶ「コラボ・インフォグラフィック」の最終発表会がありました。

発表会では、ゲストとして総務省統計局 永井様はじめ計4名の方にご参加・ご講評いただきました。

この授業の課題は数学科とデザイン学課程の学生がチームになり(数学2名、デザイン2名)、「◯月◯日 ◯◯◯の日」というテーマで、インフォグラフィックを制作します。

では、最終発表の様子を見てみましょう。ページ下部には振り返りがあります。

1.ジャニーズの日

 このチームは、ジャニーズファンの学生がいた関係で「ジャニーズの日」。興味深かったのが、ジャニーズのファンクラブ会員数。462万人もいるそうなのですが、その数を多さを実感してもらうために、「もしも横浜アリーナを会員がお金を出し合えば、一人いくらで買える?」(1人3464円で会費4000円より安い)や、「会員が100円出せば救急車や消防車が何台買える?」などの仮説を織り込んでいます。ボランティアや社会貢献の可能性を微妙に匂わせたり救急車や消防車の価格を知ってもらうという、隠れ社会的派な一面ものぞかせていました。

あとはCDの売り上げ。実はデビュー時のCDが一番売れるグループがほとんどとのこと。また「世界に一つだけの花」の売り上げがずば抜けているのも印象的です。

 

2.きのこの日

  このチームは「きのこ」についてストーリー型で説明しています。最初は「薬」がテーマだったのですが、医学的なテーマは正確性が求められるだけでなく、対象が広すぎるために「きのこ」に絞りました。よい判断だったと思います。

ストーリーは、<きのこの栄養成分→身体への効果効能→インフルエンザや癌などよく聞く病気への効果→製薬につかわれるきのこと冬虫夏草について> という流れです。概要から始まり、全員が関心を持ちそうなことに進み、最後はあまり知られていない製薬やめずらしいキノコの成長過程に進んでいるところがよいポイント。

3.青年海外協力隊の日

 このチームは最初はボランティアなどのテーマで考えていたようですが、あえて「青年海外協力隊の日」を選びました。たしかに、青年海外協力隊とは聞いたことがあるけど、よく知らないという視覚化しがいのあるテーマ設定なのかもしれません。

このチームも、ストーリー型の展開をしており、国内のボランティアの参加人数の割合から、海外でのボランティアの割合と絞っていき、海外ボランティアの種類について説明し地域ごとの活動割合を視覚化しています。

その結果、教育分野におけるボランティアが非常に多かったようです。最後に海外の子供達における課題の状況を整理し、「海外からボランティアを求められることと、日本からボランティアしにいこうとすることのズレはない?」という問いかけで終わっています。社会派ですね。

4.コーヒーの日

グローバルな 某カフェチェーン店でアルバイトをしている学生がいるためか、このチームのテーマは「コーヒー」。コーヒー豆の原産地を示した上で、その豆の加工・ロースト・引きによって、どのように味が変わるかを一つのグラフィックにまとめています。

 2枚目には、カフェインの量と砂糖の量の比較グラフ。カップ一杯のカフェインを取るためには栄養ドリンク1本じゃ足りない!そして糖分が多い!目を醒ましたいけど、糖分を制限したい人には、やっぱりブラックコーヒーということですね!

 

5.カメラの日

 このチームはカメラ好きが2名いるとのことで、カメラがテーマ。カメラが使われている台数などカメラに関する様々なデータを見せています。興味深かったのが、Googleで「カメラ」と検索された回数の推移をGoogle Trendsを使って視覚化したもの。英語・タイ語・日本語で比較しているのですが、英語とタイ語では12月が多いけど日本は1月や4月付近が多い。やはり家族で集まる瞬間にカメラが求められるということでしょうか。また、このチームは独自に質問紙を作って配って集計していました。しかし、アンケートの対象に偏りがあり、東海大生のカメラ利用に関するデータとしては偏りがあるのでは?との指摘がありました。たしかに!ただ、アンケート調査だけでも1学期分の授業になるほどでしょうから、これを機に学んでいきましょう。 

 

6.映画の日

 このチームは映画の日!全国映画のスクリーン数の推移と時代ごとのトピック的な事件を重ね合わせて表現しています。二枚目は映画の公開本数の推移。じつはあまり公開本数は変わっていないみたいです。三枚目は海外の映画館の入場料などの比較。日本はやっぱり高いですね。インドは映画の公開本数から入場者数も非常に多いのですがやっぱり入場者数も多いですね。ただ、国ごとに物価も違いますので「ハンバーガー何個分」など、比較のための共通化しやすい指標があるとベターとの指摘もありました。

 

講評会の振り返り 

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ディスカッションや質疑応答の時間の後に、学生がリアルタイムに議論のポイントを整理して視覚化するイシューマッピングをしてくれました! 彼はリアルタイムドキュメンテーションの研究メンバーなので、お願いしていなかったのに勝手にやってくれていました。最後の振り返りには彼にお願いしてしまいました!笑

 印象的だったことの一つ目はコミュニケーション。数学をやる学生とデザインをやる学生とはやっぱりぜんぜん考え方が違う。水と油といえば大げさかもしれないけど、それくらい違う。それをどうのりこえるかという話。

二つ目は「気づき」「仮説」「問い」の重要性。「知っている知っている」と思っていることを、あえて「そうじゃない」とか「もしこうだったら?」「なぜなのか」と考えてみる。それを視点の違う両者の意見の中から自ら見出していくことが重要なのではないかと思って聞いていました。

 

サイエンティストとデザイナーとの役割分担
そして対話の中で得られることとは?

チームごとに制作のプロセスは異なっていましたが、ざっくりとまとめると以下のような流れでした。工場の生産のようにアプトプットを横に流せばよいということはなく、何度も戻ったり進んだりしながら進めているのが印象的でした。

1.両者で共通のテーマを見つけ、「問い」や「仮説」を立てたり、
「まずはデータを集め」、「そこから見えること」を整理する。

2.デザイン側がファシリテーターとなり、
対話をしながらラフスケッチを描きぼんやりとした形にしていく。

3.数学科の学生はさらにデータを探し、データを揃え、いろいろなパターンで視覚化をする。

4.デザイン側で受け取ってデザインし、それを数学科に見せて図的な誤りを指摘して修正する。(繰り返し)

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また、デザイン制作の段階で、数学科とデザインの学生の対話を通して、より正しく伝わる表現を模索しようとしていることが伺えました。たとえば、ジャーニーズのグループごとの平均身長の差の例。数学科の先生によると、このようなグラフの場合、かならず原点を表示すべきだけど、身体の一部の表現しているからそれを省略しても(ぎりぎり)OKとのこと。

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 もう一つ、映画の日のチームの事例。デザイナーは比較的「絵的」に表現する傾向もあるのですが、その「絵的」な表現がグラフの表現と合わないことがあります。たとえば、デザイン側は見やすさを意識して、左右のカーテンの内側までグラフを伸ばし、Y軸の原点も人の影の部分まで伸ばしていました。しかし、数学科としては原点が明示されていないのはNG。そこで、X軸の0をきちんと作って、Y軸の0を客席の椅子の高さに合わせたそうです。理系な方から見れば「当たり前」かもしれませんが、デザイン側から見れば「あ、そっか!」というポイントです。

 

デザイン側が学んでおいたこと

この授業は合同授業を除いて前半に、数学科は確率や統計を学び、デザインはデザインの基礎を学びます。ここでは、デザイン側がデザインを学ぶためにやったことをまとめます。最初に400字程度の文章を手書きで図解しました。これは、あるインタビューにおける回答の文章を、テーマと視点を決めて、手書きで視覚化するものです。その後、それをイラストレーターで作っていきました。

まずはイラストレーターの使い方のおさらいから始め、ピクトグラム(絵文字)作り、グリッドシステムというレイアウトやタイポグラフィの基礎をやり、書体の選定やロゴ作りをして、使用するカラー設計をそれぞれ1〜3回にわけて授業し、先の手書きのデザインをイラストレーターで作り直しました。一つ一つが授業として成立するレベルのものを駆け足でやっています。本来は丁寧にやるべきだと思っています。

クオリティーはまだまだではありますが、2年生としてはよく頑張ったと思っており、これからの成長にも期待したいと思っています!

さいごに 

総務省統計局情報システム課の永井恵子様、高橋洋介様はじめ、伊山遼様、岩野美保子様、長期間にわたりご協力いただきまして心より御礼申し上げます。

授業内でINFOGRAPHIC 特別講義をしていただき、学生へのアドバイスもしていただきました、bowlgraphicsの徳間貴志氏にも御礼申し上げます。

また、大変ご多忙のところ、授業にご協力いただいている数学科の山本先生、そしてチームのサポートをしていただいた数学科の院生の皆様、誠にありがとうございました。最後に、「これで2単位なんて!」と憤慨していた学生の皆さん、思い出は100単位です。本当にお疲れさまでした!