当事者デザインを英語にすると

2018.11.4 ページ下部に追記あり

デザイン学会の発表概要を作っている時に、疑問に思ったことがあった。それは、当事者デザインを英語でどう表現すれば良いということだ。

上平先生はBy Themselvesというキーワードを、Liz sandersはBy peopleというキーワードを使用されていた。ただ当事者デザインという言葉そのものの英語訳が見当たらず、ネイティブの方で翻訳やライターをやりつつも現在は研究者の方に聞いてみることにした。

その方は、「うーん、、DIYかな」と答えた。DIY! お父さんが家のデッキを作るような日曜大工のイメージや、100円ショップの商品で快適生活を都市サバイバルなイメージがあったので、少々違和感があった。DIYをwikiで引いてみると以下のような記述があった。

英語のDo It Yourself(ドゥ イット ユアセルフ)の略語で、「自身でやる」の意。(中略)お金を払ってひと(業者)にやらせるのではなく、自身で(つまり自分の身体を使って)何かを作ったり、修理したり、装飾したりする活動のことである。DIYは、「自分でできることは自分でやろう」という理念のもとに行う諸活動である。”[https://ja.wikipedia.org/wiki/DIY]

DIYではなく、Do It Yourselfというフレーズで読めば、確かにピッタリなのがわかる。さらにDIYの歴史を辿ると面白い文章があった。

“第二次大戦後のロンドンで、廃墟に立った元軍人たちが「何でも自分でやろう」を合い言葉に、町の再建に取り組んだのが始まり”[デジタル大辞泉]

DIYには、自分たちの生活を人に頼らずに作っていこうという社会的スローガンであったのである。

「自分でやる」と「自分たち」でやる

しかし、一点気になったのがYourselfという言葉。当事者デザインを考えると、決して1人で解決するのではなく、たとえ個人の想像でも組織の創造であっても、コミュニティー内で触発し合い、支え合い、相互に利用し合う傾向がある。つまり「自分」ではなく、「自分たち」の方が合う。そこで、もしやDo it Ourselvesがある?と思って調べてみると、やはり見つかった。

Tim o’reillyがオープンガバメントの文脈で用いている。Timは赤字の国家財政に頼らず、自分たちの街や暮らしに必要なものは自分たちで作ろうと訴えています。
プレゼンテーションではo’reillyは www.meetup.comの共同ファウンダーのScott Heifermanに提案された言葉であると述べています。

さらにTim o’reillyを引用する形で、庄司昌彦さんが電子行政の文脈でDo it Ourselvesを語られていた

そう考えるとDIO Design とも考えられるし、同じDIOではあるけども、頭文字をDoからDesignに変えて、Design it Ourselvesという言葉があっては良いのではないかと考えた。先のネイティブの研究者の方に説明したら「おおお!いいんじゃない?」との返事をいただいた。

果たして、良いのか悪いのか。。

 

Design it Ourselves

(私は気に入っているのですが、、みなさん、どう思いますか?)

 

2018.11.4 追記

その後、デザイン学会でも当事者デザインのセッションが開催されるなど、様々な人が当事者デザインという概念について考察を深めている。その中でも、専修大学の上平先生が積極的に概念を整理し発表されている。特に、日本デザイン学会誌、デザイン学研究の「当事者デザイン」特集号に寄稿にされた内容を中心とした記事「当事者」をとらえるパースペクティブ がとてもよく整理されている。

この論文のタイトルの英訳を見るとTojishaと書いてある。上平先生も英訳には苦労されたようで、Facebook上で英訳の過程と意図を書き残しているの。無理に英語にするのではなく、新しい概念であれば新たな名前を与える方法もあるのか、と納得した。(こう見ると、自分の考えた英訳というのは、行為そのものを英語にしていて、そこにある文脈や思想が抜け落ちているようにすら思ってくる。)

また、2018年11月3日に東京大学でCo-designと当事者研究というフォーラムが開催されていた。「当事者研究」とは、北海道医療大学の向谷地生良先生が、こころの悩みを抱えた人たちが共同体として生活する「ベテルの家」で実践されてきたケアの方法が起点となっている。詳しくは当事者研究の研究

その向谷地先生に英訳について尋ねてみたところ、あえて新しい意味を込めるためにも、Tojishaにしていると伺った。ちなみに、その場にいた多摩美術大学の清水先生が「スキヤキみたいですネっ!」と言っていて、より一層納得した。

 

当事者デザインを英語にすると」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です