2015年3月11日の19:00〜総務省のある合同庁舎2号館にて、「行政とデザイン」という勉強会でお話ししてきました。
総務省大臣官房秘書課の越尾さまからお声をかけていただきました。参加されている方は総務省のいろんな部署で働いている方々で入省してまもない方から15年程度の方々、約20名でした。
デザインの勉強会は非常に珍しいそうです。(ドキドキ!)勉強会のメニューはこんな感じです。半分がお話しで半分がWSになっています。以下、振り返りメモ風に書き残します。
Case 1 – Collaboration-
総務省統計局さんとコラボして実施したインフォグラフィックス授業のお話し。「組むことで付加価値が生まれる」。増え続ける国債。国民は行政にすべてを求めることは不可能な時代に。コラボレーションによる行政運営の新しい形を模索できないか。
Case 2 -Trial and Error-
有識者会議における議論の場のデザイン。組織の規模が大きくなるほど、新しいことがやりにくくなる。行政の無謬性。失敗が許されない「保証領域」に、失敗を許容できる「実験領域」をつくることができるか。「実験」というキーワードを全員が認識することで、新しい成功のモデルを探索する。
Suggestion -Design Thinking to Design Doing-
ざっくりとしたデザイン思考の話。基本プロセスと協創・参加型の開発プロセスの事例。そして、海外事例を少し。イギリスではgov.ukにおけるサービスデザインガイドライン。そして、電子政府としては世界一のデンマークの行政デザイン手法。統計的に導き出した12のペルソナ事例、継続的なデザイン改善プロセスなど(参加型および定量的評価)。
Workshop
ワークショップのテーマは「行政のデザインにおける課題は何か」。個別の課題を書き出し、類似する課題を整理した上で、課題の構造化、抽象化して本質的課題を見つけていくWS。ラピッドな課題解決やフュチャーサーチ的なWSではなく、ここではあえて課題探求型。
行政のデザインは色々な人から「あーすればよい」「こーすればよい」と言われがち。でも、民間では想像できないほどの「様々な制約」がある。しかし、そこで諦めずに課題を整理して解決すべきポイントを見つけていく。それがWSの目的。
Workshopのステップ
1.最近デザインで困ったこと自由トーク(グループ)→デザイン関する課題の書き出し(個人ワーク)
2.課題の共有→カードソート→課題を生み出す課題は何か(課題の抽象度をあげる)
課題発見WSから見えたこと
付箋に書かれた課題と、グループ発表された内容を、私なりに一つにまとめてみた。(恣意的な解釈も含まれていると思います。ご了承ください)
1.デザインプリンシプルの欠如
〜デザインの原則と教育。そして成功事例の共有〜
あるチームで発表されたキーワード「デザインプリンシプルの欠如」。プリンシプルとは原則。ビジュアルデザインだけでなく、デザインのプロセスやサービス全体のデザインを対象としたデザイン原則。すでに国内ではアクセシビリティーガイドラインなど様々な文章化されたものがあるが、あまり浸透されておらず、デザインの視点は「弱め」。
一方、ガイドラインなどの言語化されたものだけでなく、行政のデザインにおける成功事例の共有も必要ではないか。見て参考にできるデザインの引き出し、そして制作プロセスの共有。行政デザインのロールモデルを作っていく。
また、公務員はデザインのリテラシーを向上するための教育は受けていない。そもそも一般的な初等、中等、高等教育において「デザイン」の教育機会はほとんどない。デザインマインド、デザインプロセス、デザイン手法などを学べる研修の必要性は?
1.マンパワー+コスト不足 〜デザインができる人が「中の人」にいると?〜
行政機関では日々、様々な資料づくりをしている。WEBサイトでの情報の発信、政治家へのレクチャー資料、ポンチ絵づくり、委員会などの会議資料、部内の企画資料などなど。ビジュアルデザインの領域に限った話ではあるが、そこにはなにかしらの「デザインワーク」が含まれている。
その多くはスピードが要求され、発注や外部とコラボできないデザインワークもたくさんある。当然予算もさくことができないものが多い。外注してコミュニケーションの品質を高めるものよりも、内製しなければいけない情報の方が圧倒的に多い。
省内にデザインワークを担当するデザインセンターやデザイン部があってもよいのではないか。省内のスタッフとそのスタッフが発信する情報を見るユーザの数を考えれば、民間ではインハウスデザイナーがいてもおかしくはないレベル。社内研修などもそこが担当してもよいのでないか。また、ビジュアルデザインだけでなく、デザインプロセスの設計をアドバイスをしたりワークショップのファリシテーションなども担うことがいれば、なお良い。あるいはDEO?
3.正確で公平でなければいけない 〜相反するわかりやすさと正確性〜
これは難しい問題。ワンフレーズにまとめたり、デザイン表現における優先順位をつけることは、正確さや公平さを失うことにもつながる。代表的なユーザを決めて、それに合わせて優先順位をつけるべき?。それとも、デザインされていない「生」のものとデザインされたものとを複数作るべき?
以上、振り返りメモ書きでした。
最後になりましたが、今回の勉強会にご参加いただいた皆様、そしてお誘いいただいた総務省の越尾様、最上様ありがとうございました。また、当日WSのお手伝いをいただいた早稲田大学大学院の加川さん宮本さんありがとうございました!