卒業研究の指導をした学生、長澤俊洋君。彼はイラストを描くことが得意で、手が腱鞘炎になるまで書き続けてしまうほどです。彼は教育に関係の仕事に就く予定だったので、キャラクターイラスト×教育をテーマに「かるた」を作ることになりました。
そこで、静岡にある東海大学付属小学校のご協力いただき、学生アンケートや歴史の教員へのインタビュー等を通したところ、小学生向けの歴史教育がテーマ向いていることがわかり、歴史上の偉人を学ぶための「偉人かるた」を作ることになりました。
そして、最終的に出来上がったカルタを持って、再び小学校にやってきました。
そしてカルタ大会開始。
総勢100キャラクター。1つ1つ手書きでキャラクターの特徴を掴んでイラスト化
5〜6人でグループわけ
「読み札」を読み上げる先生。取り札は歴史上の偉人。その時代や偉業など、「ヒント」を与えるような感じで、難易度を調整しながら読み上げていきます。
作者である長澤君も読み上げます。
歴史の先生も参戦!「どれだぁどれだぁ」という声が聞こえてきます。学生の顔が鮮明に写った写真は掲載を控えていますが、かなり盛り上がります。
こちらはVineの映像(音声注意:子供の声が大きいです)
https://vine.co/v/hQJKqg1eBvE
強い人はどんどんカードが増えていきます。
最後に長澤君が作ったカルタセット6個をプレゼント。校長先生からサインを求められパッケージの裏にサインしてます。商品化に向けて進めるか!?
ゲームを使ったオープンなテスト
ゲームベースドラーニングとかゲーミフィケーションとかきちんと勉強していませんが、こうやってゲーム化することのメリットの1つに、「ゲームを使ったオープンなテスト」があると思います。今の小学校はテストの点数を公開したりしないので、学生は楽しみながら競い合い、教員は習熟度を確認し、強い人が評価されるという流れです。
2時間かけて帰還。長澤君の歴史キャラカルタ、大喜びだった。これそのものが教育的効果を直接生むわけではないけど、カルタ大会というオープンな場で知識を競い合う→授業を大事にするという効果がありそう。
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 9
テストの点数は公開できないのでネガティブな勝負になりがち、これは子供間のプライドをうまく利用して、ポジティブな勝負を演出できる。ゲームベースドラーニングを、テスト的に展開する方法(習熟度の確認と公開)もあることがわかった。
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 9
小学校×デザイナーで何ができる?
最後に校長先生、教頭先生、担任の先生とディスカッションし、小学校においてどのようなデザインができるか聞いてみました。
1つ目は今回のゲームのような学習教材。特にデジタル教育が始まり、教材が映像やインタラクティブコンテンツになっているので、わかりやすく楽しくするデザインは重要とのことです。
もう1つは、学内のコミュニケーションツールの作成。小学校では遠足や運動会など様々な行事があり、学生や保護者向けに様々な連絡をするようなのですが、それらの資料にはキャラクターを多用使うそうです(書店に行くと小学校の先生向けのキャラクター画像集もあるとのこと)。非常勤でもいいので、キャラクターや広報物をデザインする人が学内にいれば、とても嬉しいとのことでした。
上平研究室のタイプフェイス神経衰弱!
カードゲーム繋がりで、もう1つご紹介。私の尊敬する専修大学のネットワーク情報学部の上平先生 http://blog.kmhr-lab.com が学生と、カードゲームを作ったということをFacebookで拝見して、「欲しいです!」とご連絡したところ送っていただきました。ありがとうございます!実は上記のカルタ制作においても、このカードゲームを参考にさせてもらっております。
カードのサイズは名刺サイズで角丸のPP加工。代表的な書体が印刷され、その裏には山手線の駅名がその書体でタイプされています。この書体はTRAJANですね。
TRAJANで組んだSHIBUYA。グラフィックデザイナーは書体に関して敏感にならなければいけないのは当然のこと。それを神経衰弱で学んでしまえるということです。
余談:MS Pゴシックという書体は、ビルゲイツがグラフィックデザイナーに与えてくれたチャンス(Windowsの標準書体があまりに美しくないので、デザイナーが良い書体でデザインすると、違いが鮮明になるという点で)
上平先生のところの学生はソフトウェアを作ったり、印刷物を作ったりと情報デザインの枠に囚われない色々な取り組みをされています。私も頑張って学生を導かねば!
卒業研究に思うこと
「デザインの前後」はどこへ消えた?
ところで、卒業研究の提出前、それはそれは大変な状況です。わたしも前日から学内に泊まったりと、学生も教員も体力の消耗が激しくなる時期です。
昨晩ダンボール買いした合計50本のポーション(栄養ドリンク)がゾンビ達によってほぼ消費された模様。さて、卒制提出まであと7時間。
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 18
革マル派の闘争前夜状態… pic.twitter.com/OIgZfZCUgC
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 17
こういう状況なので、卒業制作提出日=作品完成日ということになることがよくあります。そして、卒業研究の審査会の後、こんなことを思い呟いたのでした。
卒制の話:プロダクト的な作品は当然だけど、コンセプトモデルや、アート的な作品であってもデザインの制作物は提出日=完成日ではなく、事前に一般人や関係者、対象ユーザ等を対象に評価してもらうフェーズをいれるようにしたいと思う。
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 22
美術的なものであれば、ちょっとしたスペースに展示したりWebに上げてコメントをもらったり、コンセプトモデルであれば想定とした企業やユーザに評価してもらう、プロダクトであれば実際に使ってもらって、ある程度の定量的なデータをもらう。その後に1,2回修正かけるぐらいが良いと思う。
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 22
美系(著者命名)の場合は、理系のようなテストや評価、検証をほとんどしない、いや不必要(HCI系等は別) 。ただ、仮説検証とかではなくカイゼンのアイディアを得るため、いや、そもそも提案に対するリアリティやモチベーションを上げるために、そういったプロセスが必要なのかもしれない
— 富田 誠 (@tomitamakoto) 2013, 12月 22
つまり、美術系にしてもデザイン系にしても作品は最終的出前よりももっと早く完成し、他者(想定されるユーザ等)からのフィードバックをもらって、作り直すくらいのプロセスは必要だと思います。そして、もう1つ。デザインをする前にその対象についてよく知ること。論文であれば「先行研究レビュー」などを通して、研究のテーマに対して誰がどのような方法でアプローチしているかを調べるわけですが、美術やデザインはそれが欠如しがち。
つまりデザインという「作る」作業の前と後を大切にして卒業制作をして欲しいなぁと思った訳です。あぁ今年も頑張るぞお…