新学科の先生と100分間対談する授業を始めた

僕の所属する東海大学教養学部芸術学科は、これまで音楽、美術、デザインの三つの課程(コース)に分かれていた。しかし、2022年度に1つの学科として統合し新しい芸術学科となった。学科ができたのは1968年なので54年ぶりの大規模な改組だ。新しい学科のコンセプトは学際芸術(だと僕は思っている)。様式や技法で区切らずに学際的に「創る」ことの実践知を探求していく。

でも「学際」も「統合」も「融合」も言うのは簡単だが行うことは難しい。外の人から見れば同じ分野に見える専門集団は、中の人から見れば全く異なる専門集団だと感じるのは、さまざまな組織にありがちではないだろうか。研究者、そして芸術の分野においても同様だ。特に、音楽分野と造形分野は一緒にされることがほとんどない。例えば、美術大学では音楽を主とする学部があることはほどんどないし、もちろん音大にデザイン・アートを主とする学部はない。でも多くの人が思っているはずだ。「芸術を分けて考えなくてもいいのでは?」と。

さて、このような大学の改組に伴う統合にありがちなのは、それぞれの分野の統合は「学生に任せる」というものではないだろうか。つまり、色々な分野の先生が集まっているんだから学生は様々な分野の知識や実践知を吸収し、自分で統合していくはずだという期待だ。でも、異なる分野の学術知の統合は、統合される過程や統合に向けた態度の学習がなければ、そう簡単にはできないと(これまでの経験から)僕は思う。

平たく言えば、教員同士がお互いの知に出会う楽しさ知り、実践しなければ、学生はそれを学ぼうとしないと思う。だからこそ、新学科には教員同士がお互いの実践知を理解し合う、そしてその理解し合う様子を学生が理解する時間が必要だと思っていた。

今年から始めた授業、「芸術未来学」は所属する芸術学科の全教員を1人ずつお招きし、ライターの橋口博幸さんと僕が聞き手となって根掘り葉掘り聞いていく授業だ。もう10年も同じ職場にいる方なのに、100分間話すと知らないことばかりだ。作品や成果だけでなく、どのようにそれらが生まれたのか内的動機が語り出される瞬間がとにかく面白い。(学生さんが面白いかどうかはわからないが…!)

ライターの橋口さんはライフヒストリーインタビューの経験も豊富なので、タモリさんみたいに「へぇ~」「ほぉ~」とか言いながら自然な語り出しを促す。鹿児島から参加しているのもいい感じ。授業は録画していて(ある程度は)自動文字起こしされる。その内容を参考に学生グループが交代で聞き書き調で原稿・記事化している。今後はWEBに公開する(予定)。

僕はこの授業を終えるまで13名と1400分(約24時間)対談できることになる。来年度はおそらく別な先生が聞き手役として担当されるはず。それを数年繰り返せばそれなりの対話の時間になるはずだ。