グラフィックレコーディングとインフォグラフィックス、そして行政とデザイン

P11107864月24日 合同庁舎4号館にて、「国・行政のあり方に関する懇談会におけるビジュアルミーティングのあり方に関する懇談会」(半分ギャグで半分マジメなタイトル)という会議を開催しました。今まで、「国・行政のあり方に関する懇談会」という有識者会議の議論の可視化について取り組んできましたが、その活動を一度俯瞰し、効果的な手法や持続可能なあり方を模索する会議です。

もともと、この会議は「学生へのお礼になるような場を作りたい」という内閣官房の皆様からご提案いただいたことがきっかけとなり企画されたものですが、「せっかくなら、外部の方をお招きした報告会&ディスカッションの場にしませんか」とご提案し、このような会議になりました(結果的には学生にはさらなるプレッシャーを与えてしまいました!)。

参加された方は、内閣官房 行政改革推進本部の皆様、グラフィックレコーディングやインフォグラフィックの関係でご活躍されている方々、行政とのコラボレーションを実践されている方々、ジャーナリストの方など。尊敬している方々にご参加いただき、誠に恐縮&感謝しております。

取り組みの報告

まずは下記のスライドの通り、やってきたことのまとめをプレゼン。

 

議論の可視化の手法と位置づけ

スライドの1つをご説明。議論の視覚化は、参加者向けのものはファシリテーション(議論の活性化)として機能し、議論に参加していないオーディエンスに向けたものであれば、シェア(参加者以外への巻き込み)されるものとして機能するということ。また、後者の場合は、ストーリー(起承転結等)が重要になることも気がついた点でした。

議論の可視化の手法と位置づけ
議論の可視化の手法と位置づけ

 

学生の発表

早稲田 ジャーナリズムチームから
早稲田 ジャーナリズムチームから

早稲田大学ジャーナリズムチームからはグラフィックレコーディングの効果について。自分たちの活動は本当に効果的だったのかという疑問を起点として、国の議論を「自分ごと化」するためにはどうしたら良いか、そして、議論に参加していない人(後から見る人)にシェアされるグラフィックレコーディングとは、どういうものであるべきか。という問題提議がありました。

 

東海大デザインチームから
東海大デザインチームから

東海大デザインチームからは、グラフィックレコーディグの一般化(誰でも出来る化)について。イラストやテキストなどの視覚化をパターン化しソフトウェアに組み込むことにより、誰でもできるグラフィックレコーディングができるようの可能性について問題提議していました。

この背景には、「議論を聞いてみてもまったくわからなかったのに、グラフィックレコーディングしてまとめてみると急に理解できるようになった。」「特に複数人でグラフィックレコーディングすることで他者との差異に気がつき、理解が深まった」という経験があったようです。つまり、グラフィックレコーディングを特定の人がおこなうのではなく、色々な人が複数人で実践することによって、上記のような「自分ごと化」できるのではなないか、という指摘でした。

私からの話題提供

「行政とデザイン」コラボレーションを実現し持続させるためのアイディア

desgin for japan
Code for Japanのみなさま 勝手にスミマセン

ディスカッションの全体については下部に振り返り議事録を記載していますが、会議の終盤に「行政とデザイン」をテーマにした議論をしました。グラフィックレコーディングやインフォグラフィックスだけでなく、デザインの未踏領域である行政において、デザインを持続的に実装する為にはどうしたらよいのでしょうか。

私は、行政に「答えのない問題」を出して欲しいと考えています。ある役人の方はこうおっしゃっていました「行政には100%の回答を出すことがポリシーとなっている。課題そのものをオープンにし、広く国民に考えてもらうというマインドセットはなかったかもしれない」。

それを聞いて、私の大学の授業のことを思い出して少し共感しました。私は新人末端ペイペイ教員で授業もボロボロなのです。そこで、授業最後に「この授業の改善点を言ってみて」と学生に恥を忍んで聞いてみると、色々アイディアが出てきます。その場では「そこまで言うな!」と思うんですが、長期的に見れば重要なアイディアを得ることができます。

閑話休題、行政から提示された「具体的なお題」があれば、それに答えるクリエイターやライター、デザイナーが出てくるのではないでしょうか。また、それはデザインだけでなく、美術的なものあれば、小説のような文学のような奇想天外なアウトプットにもなるかもしれません。

たしかに、「お題」を告知したところで、それに対する回答の数や回答の質は高くはないかもしれませんが、それも含めて共有することが「自分ごと化」につながるのではないでしょうか。少なくとも、大学の授業の課題を、「地域課題」にしてみることは可能だと考えています。

私はCode for Japanの活動や知見を参考に、デザイン領域に絞った弟分の Design for Japanのような活動の可能性について提示してみました。(Code for Japanの皆さんもし見られていたら勝手にゴメンナサイ)以外にアッサリといいんじゃない?とお答えいただいたので、ビジョンを共有できる方、いらっしゃいましたら是非ご連絡を。

また国や行政が、そのような活動を「認めてあげる」必要性があるのではないかと思っています。「なんか凄いね!」って言われたい欲求が人にはあります。アフターファイブの仕事は「自己実現」や「承認欲求」を満たす場でもあるのではないでしょうか。そんな欲望を刺激してあげるような仕組みを行政には期待してみたいと思います。

 

ディスカッション(振り返り議事録)

ディスカッションでは、グラフィックレコーディングやインフォグラフィックの個別の手法に関する議論よりも、「国や行政が、視覚化をおこなう人達とどのようにコラボレーションするべきか」という観点の議論が白熱!発言者を明示しない形で私の個人的な理解でまとめてみました。

議論の前提:行政に置かれた状況とこれからの行政のあり方

まず、議論の前提として国・行政のあり方に関する懇談会で議論されたいくつかの点がありますので、いくつか。
・国の借金が増えるなかで、「国や行政がなんでもする時代」は終わり。
・国や行政の問題は「答えの無い問題」を多く抱えており、先送りが許されない状況。
・国や行政の問題を国民が「自分ごと化」する必要性あり。
・国や行政が、民間(企業・NPO・大学)などと「組む」ことで課題解決をする必要性が高まる
・国や行政に対する「批判」ではなく「参加」と「行動」を起こす機会が増えてきた。
・国や行政には「トライ&エラー」「永遠のβ版」発想 ”も” 求められている。

行政と国民のタッチポイントから考えてみる。
そもそもタッチポイントはなぜ必要になのだろうか

従来の政府は議会とうまくやることや、政策に関係のある業界との良好な関係を築けていれば、それでよかった。消費税などの国民を巻き込む大きな議論を除けば、1つ1つの政策に関して国民が意見を持つことは少なかった。そういう点で行政と国民がコミュニケーションするためのタッチポイントというのは限定されおり、不要なものですらあった。

では、タッチポイントをなぜ増やそうと思っているのだろうか。それは、今までに想像できなかったサービスやアイディアが生まれる可能性が出てきたから。政府が音頭をとるのではなく、みんなが自分ごととして考えなければいけない問題がある。「自分ごと化」によって、社会起業家やコミュニティーの支え合いなどの新しい取り組みが実現している。タッチポイントを増やす目的はそこにあり、グラフィックレコーディングの取り組みはその1つとも言えるだろう。

「国行政のあり方に関する懇談会」のにおける国民とのタッチポイントとは、Ustream, Twitter, Facebookなど。アカウントを運用はしているが、総じて行政のソーシャル力は弱い。行政のソーシャルメディア活用は、作ることが目的となってしまうこともある。これは、役人のITリテラシーや普段から使いこなしている人が少ないことにも起因しているのだろう。しかし、行政がそれらの問題を改善する必要はあるのだろうか。コミュニケーションに携わる人とコラボすることでタッチポイントを拡張する必要があるのではないか。江口晋太郎さんやショコラさんとのコラボレーションはそういう取り組みの1つである。

タッチポイントを作りたい人達
311がきっかけとなった視覚化の取り組みやボランティア活動。

東日本大震災後、津波や原発等のデータを公開するだけでなく、データをわかりやすく知らせるニーズが高まった。データだけでは極論のような意見が出てしまうことがあるが、視覚化されることによって、健全な議論を始めることができるようになった。行政としてもそのニーズに応えるための「ツタグラ」などの活動が始まり、国が出す情報を自分の力で視覚化したいと思えるデザイナーなどが出てきた。

また、デザインだけでなく、ソーシャルメディアを含めて情報発信全般に携わる人や、ボランティア活動をしたいと思う人が出てきた。「助け合いジャパン」などに見られるように、など専門知識を持った人達がアフターファイブで国や行政を支援するプロボノ的な動きが311で活発化した。官庁と国民も思いが1つとなった動きも出てきた。これはタッチポイントを作りたいという国民の欲望とも言えるだろう。

コラボレーションを「育むもの」と「阻むもの」

コラボレーションをしようとしても、行政側からは公平性を担保するために、「公示が必要になってしまう」と言われてしまう。しかし、これは行政の考えるドグマなのかもしれない。一度試してみると実現できることも多いのではないだろうか。また、行政はハード的なものへの投資が可能であるが、ソフト的なものへの投資が難しい。それは評価軸が曖昧であることに起因してもいる。では評価はどのように行えばよいか。例えば、グーグルでは記事がどれくらいソーシャルメディアでシェアされているかによってページランクを決め始めている。ページビューやソーシャルメディアにシェアされることによって評価する手法があるのではないか。

日本は市民から生み出されたアイディアによって、国が動き出した成功体験が少なかったのではないか。行政と民間がコミュニケーションできるようになったことによって、オープンガバメントによって、様々な活動が始まった。また、オープンデータなどの取り組みを通して、政府の情報を民間が伝えることができることに気がついた。官僚や行政が持っている権利を、国民に徐々に譲渡する過渡期であると言える。

 

誰が視覚化するべきか
行政はフラットなデータを出して、民間に委ねるべきか。

そもそも、国や行政が発信する情報がそもそもわからない状況というのがおかしいのではないだろうか。国や行政がわかりやすく情報を伝えることは当たり前のなのかもしれない。一方で、すべてのコミュニケーションを行政が作り出すことは良いことだろうか。民間がニュートラルでわかりやすいコミュニケーションを実現すべきではないか。政府が望む可視化を実現すれば、都合の悪いデータの可視化を望まないかもしれない。これは、利益総反になるのではないだろうか。国や行政はフラットなデータを出すことに徹するべきではないか。
とはいえ、フラットなデータを出したとしても、企業や国民による視覚化によって、むしろ偏りが生まれるのではないだろうか。一般国民に理解して欲しいように、視覚化をすることは、国や行政の広報としてやるべきことではないだろうか。

 

(以上、誤字脱字がたくさんあるかと思いますが、)2時間の議論をまとめるとこんな感じでした。

参加された方々

内閣官房 行政改革推進本部の皆様(藤代様, 新井様, 中居様, 鈴木様, 最上様
江口晋太郎さん (Code for Japan) http://twitter.com/eshintaro
木村 博之さん(TubeGraphics)http://twitter.com/HiroyukiKimura
小和田 香さん(会社員/非常勤国家公務員)http://twitter.com/chocolat_J
櫻田 潤さん(visualthinking.jp)https://twitter.com/visual_times
清水 淳子さん(Yahoo, Tokyo Graphic Recorder)http://twitter.com/4mimimizu
徳間 貴志さん(bowlgraphics)http://twitter.com/_tokuma
松田 大輔さん (Metamoji)
山本 智さん(NHK)
加川 直央, 角野雅美,宮本 裕人(早稲田大学)
小澤 拓弥, 小山 拓哉, 永井 結子, 小坂 晶, 細貝 遥,  浦田 裕美子(東海大学)

 

最後に

これをここで言うのもアレですが….実は懇談会の料理は税金ではありません。つまり内閣官房の方のお礼ということで、皆様から準備、ご提供していただいたものです。もちろん、ゲストの方にも謝金などをお支払いしておりません。スミマセン…. 心から御礼申し上げると共に、緊張の中長時間にわたって頑張っていた学生のみなさん、本当におつかれさまでした。