新型コロナウィルス 感染症の問題から、多くの大学がキャンパス内入校禁止し、春学期の授業をオンラインで実施することになった。本務先の東海大学もそのような決断を下した。幸か不幸か私は自分の所属するデザイン学課程の教務委員で、授業の運用を大学と教員の間に立ってマネジメントする役割だ。4月2日に通達され、4月10日にはオンラインで履修登録開始、約1ヶ月後の5月11日には遠隔授業を開始する。こんな短期間にオンライン大学へと変貌するのだ… この貴重な変化を記録に残したいと思いブログを始めた。(記録開始日は4月19日、それ以前は思い出して書いています。)
4月3日 学生入校禁止前日
明日の4月4日から学生が入校禁止になる。ちょっと前に卒業式があって、これから新しい学生を迎え入れるはずなのに、翌日にはこのキャンパスにはもう学生が入れないのだ…僕はなんとも言えない気持ちになって、帰りにキャンパスで写真を撮った。
4月6日 遠隔授業のオンラインWSをみる
大学の情報教育を主催するセンターが、Zoomを使ってオンライン授業の方法について概要や出席方法についてオンラインワークショップを開催した。100名の定員が一瞬で埋まり、もう一つチャンネルを作ったがそれも瞬時に満席となってしまった。みんな使い方がわからず音声やビデオがオンになっていることに気がつかずにワイワイ声が入ったり、ミュートの機能がわからなかったりで、まるで、村に初めてテレビが届いた時?(その当時の状態はわからないけど)のような、ちょっとおかしい光景だった。とは言え、僕も非常勤の先生方に見てくださいとアナウンスしたのにそれが見られないトラブルもあり笑えない..
4月7日 春学期で開講するか秋学期で開講するか
所属する専任・非常勤教員の全授業を遠隔授業で実施するか、それとも秋学期に延期するかるかを最終確定して欲しいとの連絡が来る。提出は2日後。まだ遠隔授業の実施方法もクリアでない状況で、全ての先生に連絡し、判断していただく。
それと同時に学生の環境が大丈夫か(パソコンはあるか、ネットはあるか)の確認が必要。急遽Google Formで学生アンケートをして環境を確認する。うちの学科はほとんどの学生がMacのノートを購入するので、ちょっと安心した。
4月8日 ビジュアルデザインコースの課題を考える
- ビジュアルデザインコースとは僕が所属しているデザインのコースで、写真、キュレーションや、インタラクションアート、グラフィックデザイン、イラストレーションなどの専門の先生が集まっている。先生方と話しあって、2020年度の春学期の課題の考えた。
- 私たちはこの非日常の日々の中で、あの時の日常を求めている。一方で、この非日常も日常へと気が付かずに変容している。戻りたいようで戻りたくない気持ちがどこかにある。いや待て、あの日常の中で、私たちは非日常を求めていたではないか。日常と非日常は相互に入れ替わり希求しあう存在だ。では私が今暮らしている日常とは一体何か。
- 家から出られなくなったとき、自宅の中で「美」を見出すことはできるだろうか。これまで作品は展示スペースにおいていた。それを、家の押し入れの隅っこでインスタレーションをしたらどうなるだろう。これまで、綺麗な景色や美味しい料理の写真を撮っていた。かけがえのないものだったからだ。では家の中で、そんなかけがえのない美しいものを撮ることはできないのだろうか。
- そんなことを考えながらこのような課題案になった。
4月9日 初めての課程内オンライン会議
自分が所属するデザイン学課程で初めてオンライン会議が行われた。大学への提出の締め切りが直前で、メールの連絡ではどうしても最終判断できず、オンライン会議をお願いした。結構大丈夫だ。
4月12日 デザイン学会での発表を諦める
デザイン学会の発表締め切りは4月13日だ。発表しようと思っていたものがあって、3月末まではそれに専念していた。でも4月の大学のオンライン化の話がきたときに、もうダメだと思った。ただ、消極的な理由ではなく、この大学のオンライン化に問題にしっかりと向き合おうと思った。おそらく博士後期の修了も伸ばさざるを得なくなるだろう。学費も追加で必要になるだろう。
そもそも、僕の研究そのもののテーマを変える必要が出てくる。僕の研究は研究者などの専門家同士の協力や対話なのだが、その方法がワークショップになっている。こんな状況の中でワークショップはできないしデータも取れない。多分、オンライン上の協働の研究をするのかもしれない。悩ましい。後で考えようと思う。
4月13日 限定公開Youtuberデビュー?
Youtubeなどのビデオ授業はいつかやらねばと思っていた。いや正確には、数年前にSchooで授業ビデオ3本を作った経験はある。むしろ、その経験があるからこそ、苦手なのかもしれない。
もう少し顔がよくて、もう少し滑舌がよくてば、もう少し楽しいことが言えて、もう少し人に優しい人間なら、と言い訳ばかりで気が乗らなかった。
でも、もうそんなことを言ってられない。まずは手始めに、大学の授業サービスのログイン方法をビデオにしてみることにした。こんなのビデオにする必要もないんだけど…
ちなみに、オープニングの映像とかはこのために大学で撮影した。黒板画像も、学生が普段使っている教室の写真を撮っている。キャンパスに入れない学生が大学のことを思い出せるようにと、粋な計らいをしたつもりなんだが…
簡単に編集できるようにiMovieで作ったのに5時間もかかってしまった。
4月15日オンライン教授会
初めてのオンライン教授会が開催された。初めてなのに、混乱もなく、内容にも集中できる。ドキュメントもみやすいしリアルな教授会よりもチャットで反応できるから便利だ。ドキュメント管理と一緒に進めるのであればTeamsはとても便利だ。議題に対する異議なしが👍で代わる日もそう遠くないかもしれない。
教授会が終わった後はその下にある学科の会議、さらに課程の会議と続く。全てオンラインであったが問題なく進行した。みんなピースでスクリーンショットでも撮りたかったが、そんなことを言える立場ではない。
4月16日 オンラインゼミ
オンラインゼミは4回目。朝9時からだが、みんなが欠席なく集まっている。今日の体操は、超ラジオ体操。朝の体操は気持ちいい。事前にオンラインホワイトボードのmiroに悩みと共有したいことを書いているが、最近は(教員が率先して)落書き板と化している。他の大学のイケてる先生は、同じmiroの付箋機能とかを使ったブレストの様子が投稿されている。大きな差をだ…
だが、学生はアルバイトもなくなってしまい、やることもなく就職活動も停滞していて、なんだかアカデミック なモードになれない。雑談とか遊びの時間をたっぷりとって、卒研へじっくりと進めていきたい。
4月17日 筑波大学でオンラインゼミ
社会人学生として博士後期課程に在籍している筑波大学でもキャンパス入校禁止、オンライン講義に変更となった。筑波大学もMicrosoft Teamsの利用が推奨され、指導教員の先生や他の博士課程の学生さんとオンラインでミーティングした。対面だと時間を合わせるのが大変だが、オンラインだとすぐに集まれる。社会人学生とオンライン授業は相性がいいのかもしれない。
4月18日 非常勤の先生と1年生をTeamsに召喚
今日は、1年生の学生と非常勤の先生をMicrosoft Teamsに招待した。4月初旬より教員が手分けして新入生の携帯番号を取得し、一人一人にSMSで連絡し、ラインのオープンチャットに参加してもらい、必ず閲覧できる連絡網を作っていた。それを用いて、Microsoft Teamsに招待した。1人でも同じプラットフォームに乗ってくれないと、10年前のプラットフォームで授業する羽目になるので、参加してもらうことが重要だ。
学生、非常勤の先生からひっきりなしに連絡が来る。普段は「塩対応」と指摘されているので、雑にならないよう連絡しているつもりだが、やっぱり塩っぽさが滲み出る。今後は絵文字を多用しておじさんLINE風に行こう😅
4月19日 全学年対象の履修登録相談会
今日4/19(日)は午前に在学生対象の履修相談会だった。履修登録の最終日前日だ。しかし、今日の学生の参加人数は20名程度で思ったより参加者は少ない…もしかしたら朝早かったのかもしれない。うちのあるゼミ生は朝7時に寝るという漁師もびっくりな夜型(超朝型)人間だった。
いっそのこと夜に授業を入れて、夜間学校みたいにした方がいいのだろうか。その方が、同居する家族のオンラインミーティングのバッティングに配慮できるかも。夜の0時から始める深夜番組みたいな授業の方がグルーブ感が出るかもしれない。※大学としては、原則、時間割通りの開講を推奨されています。
ところで、今日は、専任の先生は全員が参加された上に、非常勤の先生も直前連絡にも関わらず何名か参加してくれた。
学生もそうだが、今回の遠隔かは、非常勤の先生にも申し訳ないのだ。その理由は遠隔授業の準備に加えて、大学ごとに違うラーニングシステムが挙げられる。例えば、非常勤先の早稲田は今年からMoodleになったし、実践女子大学はmanabaというシステムだ。場所ごとに違うスマホを交換させられるような、煩わしさがある。では、もし仮に、全大学が一緒のシステムになるとどうなるのだろう??
いや、しかし、本当の問題はツールではなく、この状況の中で何を学ぶのかだ。つまり経験的な学習や、共同学習などの学びの本質的な部分をどうやっていくのか、それについてしっかりと考えなければいけない。これはまた後で書こうと思う。そして今日も大量のメールとライン返しをして、実働12時間….
4月20日
今日は朝から随分と久しぶりに大学に行った。今日は在学生の履修登録締め切りなので大学に行く。朝9時からオンラインゼミだから朝7時に起きて身支度して大学に向かった。そう大学は朝9時から授業が始まっていたんだ。そんなことすら忘れてしまったくらいだ。
ちなみに、今の大学は職員が交代で大学に出ているので無人ではないが、もう本当にガランとしている。でも、常にハンディータイプのアルコールを持って、触るもの全てにアルコールをかける自分が、映画の世界にいるみたいだ。
オンラインゼミの開始時は体操をするんだけど、今日は自衛隊体操(ラジオ体操の自衛隊版?)盛り上がった。
4月21日 ひたすらに打ち返す
起きてから寝るまでひたすらに教務関係のメッセージのやり取り。教職員はメール、学生はライン、他の学部の先生はTeams、仕事付き合いはメッセンジャー、で格闘。例えるならワニワニパニックとか、色んなバットで打ち返すスポーツみたい?親指の付け根が痛くなって、人指さしで打っているからおじいちゃんみたいだ。
4月22日 腱鞘炎の進行
上から依頼が来る→情報を確認・整理する→専任の先生や非常勤の先生、学生に連絡する→問い合わせに対応する。を繰り返す。現在は履修登録後の問い合わせ期間で、学生からの問い合わせ多し。文章を打つのも辛いくらい腱鞘炎が進行しているので電話で話させてもらう。新入生は電話で話すと、ホッとしてくれているような気がする。(勝手にそう思っているだけかもしれないけど)その後、気を許してくれるせいか、個人メッセージでの問い合わせが増えるのだけど(笑、信頼関係がある人とのチャットならスムーズだ。
午後に行政の依頼案件で学生と打ち合わせすることになった。ZOOMで打ち合わせできる?と聞いて「できます!」と聞いて、サクッと打ち合わせ。一瞬立ち上がった時に寝巻きなのが、微笑ましい。なんだか、合宿で仕事をしているような信頼関係を勝手に感じた。
そう言えば、今日の午前中にある新聞社から午前に電話取材があった。行政の情報発信についてのコメント。今日の夕刊に出ると聞いて驚いたが、夕刊を見てみても出ていない。本当に取材だったのだろうか..
今日は、朝9時から19時まで休みなし。
4月23日 オンライン会議とメール打ち返し
9:00からオンラインゼミ。もう当たり前のように寝ぼけた顔で集まり、「超体操」で目を起こす。ZOOMのグループ分け機能で少人数で話してもらう。
10:00から大学のとある会議。外部の業者も合わせた初顔合わせの会議。画面の中に20人くらい?の顔が並ぶ。大人数の顔合わせは今後はオンラインが当たり前になりそう。
13:00〜筑波にある研究所と都内の企業とのオンライン会議。これもまた全員が集まるのが難しいのだけどオンラインなら集まりやすい。
その後は学生の問い合わせに対応。手が痛い。17:00には仕事をやめたがラインでの打ち返しが続く
4月24日 疲労
ちょっと疲れが出てきた。午前の打ち返しのあとは休む
4月25日(土)履修登録のエクスペリエンス
今日は、疲れて仕事が進まなかったので文章を書いた。
学生の履修手続きや修学に関する連絡は、とにかく複雑だ。大学には履修登録システム、連絡システム、シラバスシステム、授業支援システムなどがあるが、それらは別々のシステムになっている。
他の大学も似たように複数のシステムを組み合わせているみたい。法政大学の在学生による新入生サポートチームがこんな投稿をしていた。
学生はこれらのシステムでどのような情報を受け取り、どのような手続きをしているのか、窓口役を担当して初めてこう言ったことに気がついた。(ごめんなさい)
さらに、非常勤の先生はどうやってシラバスを登録し、学生の問い合わせの対応をしているのか。事務手続きを管轄する教務課はどのように業務をしているのか。教科書販売を担う書店はどのように教科書を納入し、オンラインで販売し学生が受けとるのか。それをどうやって共有できるのか。
そうこれは、エクスペリエンスザインや、サービスデザインの担う領域だ。1年がかりの大学オンライン化プロジェクトであれば、サービスブループリントなんかを作って緻密に確認しながら設計図を描くのだけど、そうも言ってられない。
一方で、これは教員なり窓口側が全てを理解しなければいけないと言う問題だけではないはずだ。学生が教員や職員がどう手続きをしているのか、その手続きの根拠となる仕組みはルールはどのようなものかをよく理解しているかと言えば、怪しい。
それぞれの手続きを可視化し俯瞰することで協力関係を促すはず。アクターごとにやるべき手順を文章にすることも大切だが、どのように人と人が協力しているかの全体像を知ることで、それぞれのアクターが最適に振る舞えるようにならないだろうか???
誰か課題制作や卒業研究とかで履修登録やオンライン授業の体験の可視化やデザイン提案とかを一緒にやってくれないかなぁ..
4月26日(日)ゼミの活動内容について相談する
- 今日は夜、あるアーティストのYoutubeライブを見た。目の前には缶ビール。ライブが終わって、チャットで888888. おや、目にゴミが入ってしまったようだ。チケットはオンラインで買って募金。妻は奥でオンラインのマインドフルネスをしている。妻も目にゴミが入ってしまったようだ。
- ずいぶん前なのだけど、「芸術・デザインのためのオンライン授業はどうしよう」というFBのグループを作った。主に芸術・デザイン系の先生が集まる小さな相談コミュニティーを作ろうとしたら、いつの間にか130人になっていた。https://www.facebook.com/groups/2501509753495797/
- ちなみに、オンライン授業に関する共有グループとしては「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」がある。現在17788人。日本中の教員が情報交換をしている。すごい時代だ。https://www.facebook.com/groups/146940180042907/
- 僕は、ゼミの活動についてどうするか、ここに投稿して相談をしてみた。自分で書いていて、なんか納得が言っていないし、どこか怖いし、同時に短絡的な気もするのだ。多摩美の吉橋先生がコメントをしてくれた。https://www.facebook.com/groups/2501509753495797/permalink/2519219135058192/
4月27日(月)疫病と芸術とゼミ活動と
- 月曜日でオンラインゼミ。なんだかみんな暗い。僕もテンションが上がらない。ラジオ体操をしてもイマイチだ。
- 前日にFBグループで相談したゼミ活動について、学生から見てどのような違和感があるか聞いてみた。具体的な手順を踏んで、相互に選択肢があれば良いのではないかと助言してくれた。少し先が見えたかもしれない。でもまだ違和感が残っている。
- 夜に、佐宗邦威さん(biotope)と三石さん(goscobe)のFacebook ライブの対談がとても楽しかった。スペイン風邪やペストといった大きな疫病によってどう社会が変容し、どう人の心が変容し、そしてどう芸術が変容したのか、を聞くことができた。
- ペストとルネサンスの関係性は面白かった。残念がら録画は公開されていない。お二人とも知っている人なのだけど、家のテレビに転送して見ると、なんだかテレビに出ているみたいで不思議。
4月28日(火)授業の打ち合わせ
- 今日はiPadを先生に送るために大学来た。そして、オンラインでビジュアルデザインコースの先生と授業の打ち合わせ。写真の先生は、スタジオに籠もってオンライン参加されていた。どうやって授業をするか2時間近く話した。
- Teamsのビデオ通話は重い….なのでiPadでビデオをオンにして、作業はパソコンにするようにしている。
4月29日(水)昭和の日 カリモク60の椅子
- 腱鞘炎や肩こりが酷くなって、椅子を注文した。カリモク60シリーズのチェア。カリモク60とは、家具業界の最大手カリモクが1960年代に販売してた普遍性の高い家具を、ナガオカケンメイさんがプロデューサーとなって復刻したもの。
- ナガオカケンメイさんは元々日本デザインセンターなどで活躍されていたグラフィックデザイナーだが、2000年にロングライフデザインをテーマとするD&DEPARTMENTというお店を初められた。
- ネットモールのような超低価格商品ではないけど、いわゆる有名デザイナーのような高価格商品でもない。日本製の家具として大衆的な値段で、修理がしやすいロングライフデザインだ。
- 昔からあって、これからも長く使えそうな素朴なもの。コロナによって世界がガラッと変わってしまいそうな不安を、少しだけ癒してくれる。
4月30日(木)
- 今日は朝9時から16時まで3本連続7時間のオンライン会議をやって、ベッドに飛び込んだ。1時間寝て晩ご飯を食べた。これが未来の働き方なのだろうか。
- 今日は新入生と専任の先生、事務の方が集まって相談会だった。あえてビデオをオンを強制せず(教員はオンだけど)声とチャットだけの対話。声の調子からどんな学生か想像する。ラジオDJのテレホン相談タイムのような感じ。これからよろしくね。
- 昨日のスーパーの帰りに花屋に寄った。迷わずにこれを買った。サクラなんとかって名前だったはず。
4月編はこれで終わり 5月編へ